母:敦子物語 Vol.59

基本的に、家族旅行の場所も、食事にしても意思決定者は自分であったので、今年は此処へ行こう!と提案したり、出かけてからも此処で食べよう!と決めるのが通常だった。夫は食事に対する体内時計が正確なので、朝ごはんが少し多かったから昼ごはんは遅くするというようなことも殆どなく「ほら、昼飯だぞ、何を食べるんだ?」と聞いてくる。時にはあまりにも正確なその体内時計に「私はお腹空いてないからお父さんだけ食べれば」なんて言ったこともあるが、そういうことを言うと黙ってしまう。故に、基本的には何でも決めるようになった。

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レストランでも「で、何を食べるんだ?」と特に自己主張ががない夫なので、店のみならず食べるものもこちらで決める。マヨネーズはかけない方がいいとか、ドレッシングがいいとか、とにかく細かく指定しても、全てそれを聞き入れてくれる。夫の親戚たちをみると、亭主関白の気質はゼロではないはずなのだが、自分との関係で、夫の性格もどんどん変わっていったのだろう。本来の夫の性格はさておき、自分が常に全てを決めるというスタイルは我が家では定着していた。

ただ、ある時、露天商のお好み焼きを購入し、食事を作っている間に先に夫に食べ始めてもらっていると、夫が「なんか臭くないか?」と言ってくる。「今買ってきたばっかりなんだから臭いわけないでしょ」と答えると「そーか?でもなんか臭いなー」などと言いながらも半分以上食べてしまった。食事作りも終わり、席について自分もお好み焼きを食べると、一口で吐き出すほど、ガソリン臭い。「えーこれを食べたのー?」と夫に言うと「お前が臭くないっていうから」とのことで随分悪いことをしたと反省した。

食事では、他にも同じものを食べているのに、夫の方にばかり「はずれ」がいってしまうなんてことも多かった。アサリを食べても夫の方には砂が混じっていたりして、常に自分の負の部分を吸収してくれるような夫なのであった。