母:敦子物語 Vol.17

三人での生活にも慣れてきた頃に、娘が兄弟が欲しい!と言い始めた。「弟か妹をデパートで買ってきて」という娘に戸惑いながらも、新たに子供を作って良いものか?と悩んだ。確かに夫は優しく娘のことも大切にしてくれていたし、新しく子供が出来たからと言って、連れ子の娘への態度を変えるとも思い難い。それでもせっかく安定した今の生活のバランスが崩れるのでは?という漠然とした不安があり、中々新しい子供を作ることが出来なかった。

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そうしている内に、夫からも子供が欲しいという話が出るようになった。両方からの要望に、思い切って挑戦してみようという気持ちになり、子供を産むことを決意した。ただ、夫は男の子を欲しがっているだろうなということも薄々感じていたので、子供を作るなら絶対に男の子!という決意をもとに、その当時流行った男女産み分け方の本をもとに食生活改善から行った。そうしているうちに妊娠したのだが、お腹にいるうちから、とにかく胎児が元気で、年中お腹を蹴飛ばしているし、食べたくなるのがドジョウで、夜になると夫に柳川鍋のお店に連れていってもらい、ドジョウばかりを食べた。

これだけ元気で、食べたくなるものもドジョウだったら、きっと元気の良い男の子に違いない!そう確信したことで、事前に準備する洋服も男の子用のもの、名前も武士と書いて「たけし」という名前にしよう!と決めて準備を万端に出産を待っていた。

そんな時、娘が「もし、女の子だったらどうするの?」というので「そんなわけは絶対にないよ!」というと「もし女の子だったら、私が名前をつけてもいい?」というので「いいよ!」と約束した。何故なら、絶対に女の子であるはずはないと思っていたからだった。

2月の雪が降る寒い日、いよいよ出産日になった。病院ではなく、産院で産んだため、今でいうところの助産師さん、その当時のお産婆さんが出産を手伝ってくれた。一生懸命に産みあげてぼんやりした意識の中で聞いた鳴き声がとても元気がよくて「あーこれで役目を果たせた!男の子でよかった」と思ったらお産婆さんに「可愛い女の子ですよ」と言われて、思わず「え?そんなはずありません」と言ったのだが「間違いなく女の子ですよ」と言われ、愕然とした。「あー家に帰れない、どうしたらいいんだろう」そんなことを思ったら意識が遠のいてしまったのであった。