母:敦子物語 Vol.15

娘と二人での生活は数年続いた。そんなある日、一人の男性と知り合った。関西弁で明るく優しい人だった。子供がいることを知っても、驚いてはいたかもしれないが、表情に出すこともなく、話を聞いてくれた。ただ、年齢が一つではあるが下だったこともあり、自分のことなんて本気にはならないかなという気持ちもあった。

IMG_7794

ただ、以前から決めていたように、寂しいからと男性に頼るということはしたくなかったので、定期的に話をするようになってからも、甘えたりということはしないように努めていた。
いつしか、娘とも会うようになり、娘はその男性にとてもよく懐いていた。自分が家に居ない時は、ドアノブにみかんの沢山入った袋をかけておいてくれたり、時にはりんごだったり、優しい人柄に和まされることも多かった。少しずつ距離が縮まっているのを感じながらも、前回の失敗からも、簡単に結婚を決めたりもしたくなかったし、期待して裏切られてしまうことも怖かった。
そんな日々が続いていた時、娘の方がその男性に話を切り出した。「私のお父さんになって!」思わず驚いて娘を見たが、娘の表情はいたって真剣である。男性も困惑しているようでもあり、その場をどうおさめようかと慌てたが、その時から急速に現実的に男性との結婚を意識するようになった。結婚もせず、このままの関係を続けていれば娘を期待させてしまい可哀想な思いをさせる、会うことを続けるということは結婚するという形をきちんと取りたい。
男性も自分たちの生活があまりにも可哀想に思えて優しくしてくれていただけかもしれない。だとするならば、気持ちがないまま関係を続けていくことは良くない。ここで関係をはっきりさせなければ!娘の言葉をきっかけにそう決意した。
真剣に自分から二人の関係について話をすることはなかったので、緊張したが、男性の気持ちも本物であると確信出来、再婚することになったのであった。
※母の当時の写真が手元になかったので、私の幼少期の写真を使用。